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「で、どうしてこんなに人が多いんですか?」
道場の戸を開けて中を覗いた沖田は、半眼になって周囲を見渡した。
楓もその隙間から中を覗く。
「いやぁー、総司が面白ぇ奴と試合するって聞いたもんよぉ」
「そりゃ見に来るでしょ」
「で、どんな人?総司さんと試合するっていう強者は!」
中から至極楽しそうな声が聞こえる。
久々に聞いたためか、人間の姿で聞いているためか。楓は知ってるのに知らない人の声のような妙な違和感を感じた。
それは、山南や沖田、土方に会ったときには感じなかったものだ。
楓は少し考えていたが、新しい声が聞こえて、そちらに意識を奪われた。
「…………暇だったのでな」
「私も同じく。源さんもですよねぇ~」
「はい」
「…三馬鹿に一くん、山南さんに源さんまで…」
隙間から全員は見えないが、話を聞くと、どうやら幹部が勢揃いらしい。
「ちょ、今はっきり三馬鹿って言っただろ総司!!」
「はぁ…あ、どうぞ入ってください」
「は、はい…」
先程の沖田の言葉に、聞き捨てならねぇ!と文句を言う原田を無視して、沖田は楓を中に通した。
入って中を見渡すと、際ほどの面々の他にも稽古をしていたであろう胴着姿の平隊士がちらほらと。
遠巻きにこちらを見ていた。
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