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「では、始めましょうか。……お話はその後で…」
最後をひっそりと楓の耳元で言った沖田の顔をちらりと見る。
その顔は先程と打って変わって鋭かった。
「…ん?なんだ。まだ初めてねぇのか」
沖田と楓が向き合って距離を取ったとき、土方がのっそりと道場に入ってきた。
「あ、土方さん。丁度良いところに!審判お願いします~」
「あぁ?面倒臭ぇなぁ…」
そう言いながらも、土方は審判をするために二人の間に移動する。
「勝負は先に一本取った方が勝ちで良いですね?」
「はい」
返事をして、楓は中段の構えをとった。
沖田も同じく中段に構える。
「では……始め!!」
二人は同時に床を蹴った。
――――……
「おいおい、何もんだぁ?あの異人」
「自棄に速ぇな…」
「凄いよ…目で追えない」
カン
カンッ
楓と沖田の試合を見ていた原田、永倉、藤堂の三人は、漸く言葉を発した。
試合開始から既に一刻(約30分)が過ぎようとしている。
カンッ
ドドッ
カッ
木刀同士の当たる音と沖田の足音だけが響き渡る。
二人はお互いに木刀に掠りもせず、攻防を繰り返していた。
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