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「止め!!勝者沖田!」
土方が合図を出して、試合が終了する。
しかし、楓の頭にその声は届かなかった。
「ごほっごほっごふっ!!」
楓は打たれた脇腹を押さえて、壁に背凭れたまま顔を歪めて咳き込む。
視界はボヤけて見えた。
「っ!黒之助さんっ大丈夫ですか!?」
周りが唖然としている中、沖田が楓に駆け寄った。
「ぐっ…はぁ…だ、大丈夫です…」
「!血が…」
楓は呼吸を整えながら、なんとか返事をして口元を手で拭う。
いつの間に切ったのか、唇からは血が出ていた。
(悔しい…勝てると思ったのに…!)
楓が後ろに回り込んだ瞬間。楓は沖田に向かって木刀を横に振り払ったが空を切り。
それを屈んで避けた沖田は後ろを見る間もなく、そのまま木刀を後ろに突き出したのだ。
それは楓の脇腹に当たり楓は吹っ飛んだ。
後ろを振り向けば、その間に距離を取られる。瞬時にそう判断した沖田の経験と勘が勝敗の鍵を握った。
楓は悔しさに手をきつく握り締めた。
「いやぁ~いい試合でした」
「…ええ。ここにいる者達とは一味違う」
「ですねぇ」
見ていた者は口々に感想を言う。
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