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「うぉぉお!!すっげぇぜ!!」
「大したもんだ」
「なぁっなぁ!!次僕とやろうよ!!」
わいわいガヤガヤと。観望していた者達が楓の元へと集まり出した。
平隊士達は幹部達に遠慮しているのか、遠巻きに興味津々の目でこちらを見ている。
「…………」
そんな中、土方だけが黙って何か考えるように、じっと楓を見据えていた。
(悔しい…!けど)
こちらに手を出して起こしてくれようとしている沖田の手を借りずに、楓はよろよろと立ち上がる。
血の味のする唇をキュッと噛み締めて離すと、すっきりとした面持ちで周りを見渡した。
「楽しかったです…」
「……そうですね!」
楓の出した手を一拍開けてから取って、沖田は微笑み返してくれた。
この時代にはまだ“握手”という習慣がない。それでも、楓は沖田と握手を交わしたいと思った。
沖田が何も言わずに握り返してくれたことに内心、ほっとしていた楓は次の瞬間、冷気を感じ取った。
「あれぇ?僕どっかで黒之助さんのこと見たことある気がする…どこでだっけ?」
ゾクリ…
楓は恐る恐る握っている手から、相手の顔へと目線を上げる。
そこには、目を開いたまま微笑して固まっている沖田がいた。
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