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(ひぃ…っ!)
楓は心の中で悲鳴を上げた。
顔は笑っているのに目が全く笑っていない。…何を考えているか分からない分、余計に恐怖を感じて、楓は頬を引き吊らせた。
一方、周りは沖田の異変に気付いていないのか、のほほんとした空気が流れている。
「うーん…でも、その目は一度見たら忘れないよねー…でも、あの身のこなし…」
藤堂は頭を捻りながら思い出そうと、沖田と楓の間に割り込んで、楓の顔を覗き込んだ。
どうやら沖田の異変にはまだ気付いていない様子。
ある意味、勇者な藤堂を心配しながら楓は間近の顔に話しかけた。
「な、なんですか?」
「んーや、ねぇ。…どこかで会ったことある気がするんだよ。あったっけ?会ったこと」
「んぉ!?なんだぁ平助。男を縄文式の軟派かぁ?」
それに気付いた沖田の後ろにいる原田が、ケラケラと笑いながら藤堂をからかう。
こちらも沖田の異変に気が付く様子なし。
「違うよ!!…あっ!もしかしてあの時の…」
藤堂が何かを思い出した様子で声を上げたとき。
「平助っ!」
ドスッ
「ぐはっ!!」
沖田が藤堂の鳩尾に肘を打ち付けた。
「ちょ、総司!?あぁあっ平助ぇ!!」
気を失って崩れる藤堂を原田が慌てて支える。
その騒動で気付いた周りの視線が、一気に楓達へと集まった。
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