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つい最近までよくヒデミを迎えに行っていた。電車からの風景が久しぶりに思えた。
キャビンに火をつけようとライターを探すがどうやら落としたようだ。こういう時、勇司はケンカ相手からライターを貰っていた。黙っていても向こうから絡んでくる。無事にライターを貰って改めてキャビンに火を点けヒデミの下校時間を駅前で待っていた。
ひでみは勇司を見つけた瞬間、友達をおいてけぼりにして走った。
『どうしたん?最近電話なかったからビックリした😃』
嬉しそうな笑顔。しかし次の瞬間、ひでみは突き落とされた。
『ヒデミ、ごめん。もう別れよ。もう好きやないねん。』
勇司はヒデミの眼を見る事も出来ず横を向いたまま冷たく言い放った。
『……ぅん。何となくわかってた。でも私はこの先もずっと好きやで。ありがとう…』
ヒデミの顔を一度もみずに勇司は背を向けて電車に飛び乗った。
あっけない別れであった。しかし勇司に後悔や悲しみはなかった。
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