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その時は母が電話に出たが…
『………………もう、電話しないでください』
それだけ言って母は
その電話を切った。
しかしそれだけ言った母に納得がいかなかったのか電話はもう一度、鳴りはじめようとした。
電話が鳴る前に電話は毎回"カチッ"っと音が出る。
母には聞こえないらしいのだが私には絶対に聞こえる。
藍兄からの電話もその音が鳴った。
私は次に続く着信音が鳴る前に電話をとってなるべく小さな声で「もしもし…」と言った。
すると向こうから聞こえてきたのは若い男の人の声。
温和だと思っていた母があんなにも嫌悪感をあらわにし、愛想の良い母が一言で終わらした電話の相手が知りたかったのだ。
「直ぐに電話を切るなんてッ……ってあれ?夜木さんのお宅で合ってますよね…」
慌てたように話す、その人は私が母では無いと気づくと落ち着いた声で確認をとった。
「はい、夜木です。さっき、母と電話をしてました?」
「……もしかして、澪ちゃん?」
この人は私を知っている?、その疑問が頭をまわる。
「…きっと、聞いても信じてくれないだろうけど…君の兄にあたる西東藍だ。始めまして…」
私はきっとそこで電話を切ったはずだ。
それ以降一度も、その電話は鳴らなかった。
しかし彼のことが気になった私は母に彼のことを遠回しに聞いてみた。
本当に遠回しに…
"私にお兄ちゃんっているの?"
それに母は
『……貴女は一人っ子よ?決して兄弟なんかいません!お父さんの子供は貴女一人……"あんな奴"の子供は貴女の兄なんかじゃない!!』
それは悲鳴にも似ていて
それでいて願いの様なもので、私は何が何だかわからなかった。
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