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目を開けると不思議と気分がよくかった。
肩も首も瞼も…どこもかしこも軽く感じた。
「……おはよう」
軽く歩いていたはずなのに"その人"を見ただけで重くなった。
「おはよう。…昨日、何かあったの?」
「……何が?」
私はその人の顔を見ない。
絶対に見てやらない。
見たくもない。
「ほら、電話あったみたいだから…」
─何?人の携帯電話覗いたの?
絶対に口にはしない。
「……何もないよ。間違い電話」
私に兄なんていない。
間違ってもアレは兄ではない。
断じて!!
「…そう?なら、いいの」
貴女は誰の心配をしてるの?
貴女の目に見えている私は誰?
そう、聞きたくなるのを抑えて私は顔を洗うために洗面所へと足を向けた。
「……、今日は遅いの?」
母と呼べない、その人。
朝食に手をつけはじめた私はテレビを見ながら聞く。
台所で食器を洗っていた母は水を止めて皿の水気をとりはじめた。
「一応、日勤…の予定なんだけど、ね」
「そっか、じゃあ今日も遅いんだ」
母の日勤は遅い日だ。
「……ごめんね」
「大丈夫。仕事だもんね」
─何時まで"いい子ちゃん"をやってるつもりだ?─
その声が頭の中で響くが口の中のご飯を飲み込んで私は知らないふりをした。
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