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「"買った"って…?」
「支配人にお金払ったの。
そしたら、ユチョンをくれるって」
あ、まただ。
売り買いされるのは。
孤児院に連れて行かれた時も。
娼夫として働いた時も。
ここで働く時も。
こいつにも、今、買われた。
結局、人間は汚い。
金さえあればいいんだもん。
俺は金より愛がほしい。
ま、無理だろうけどね。
このまんまじゃ。
売り買いされる俺も十分汚いし。
何を期待したんだろう。
こいつに、ジェジュンに。
ジェジュンだって財閥の御曹司。
金中心の生活してるんだ。
どっかで期待してた事に気付いた。
そしたらなんか悲しくなって、顔を見られたくなくて。
逸らして、俯いた。
「…なんでそんなに俺がほしいの?」
「…ピアノ弾いてた時、とても、悲しそうだったから」
「だからって…」
「僕が、笑わせてあげたいなって」
予想外の答えに、唖然となる。
嘘じゃないのか、とジェジュンを見詰めると真っ直ぐ俺を見てた。
「ほら、今も悲しそうだよ?」
「う、うるさい…っ」
「僕がユチョンのこれからを保障してあげる。
だから、僕に買われて?」
…なんて口説き文句。
こんな口説き文句、俺でも言わない。
くそ、面白さと嬉しさから顔がニヤケる。
「…僕、今、すっごいかっこよくなかった?」
「ぷ、ふ…っ、はいはい、かっこよかったよ…っ」
「だったらなんで笑うのさぁ!!
嬉しくて泣くところじゃないのっ?」
「いや、嬉しいよ?」
「じゃあ、買われてくれるの?」
「しょーがないからね」
あんな口説き文句言われたらね。
うん、まぁ、嬉しかったし。
「今日からユチョンは僕のものっ」
…可愛いしね。
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