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親に捨てられて15年。 ピアノを始めて15年。 孤児院を出て2年。 娼夫として働いて1ヵ月。 ピアノを再開して1ヵ月。 …今考えたらすっげー波瀾万丈。 武勇伝じゃん。伝説じゃん。 …娼夫はこの間やめた。 愛するピアノを弾けてる、今、結構幸せな訳で、他に望むものはない。 なーんて、やっぱり金はほしいかな。 そんなくだらないことを考えてるうちにピアノを弾き終えた。 鍵盤からそっと手を離して、肩の力を一気に抜く。 イスから立ち上がって最後にきっちり礼をして出ていく。 ははっ、マヌケ顔。バーカ。 去り際に一回だけ後ろを向く。 嫌そうにしながらも、その場のマナー、社交辞令として拍手してる大人達。 いや、ちゃんとした意味で拍手してくれる人もいるけどさ。 その一瞬の中で、客を一通り見渡してからステージから消えた俺。 あーあ、"俺の時間"が終わった。 _
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