2章:国と国とを背負う者

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元より気性大人しく、水の王たる異名を抱く男が、好き好んで血を浴び、混乱を招く兄と気が合うはずがなく。 昔は互いに《死ねばいいと思っていた》と公言するほどの険悪さ。 付き合いができたのも、互いに覇権を握ってから、というのも頷ける。 誤解が解けた今は、それなりに気の置けない仲ではあるらしいのだが。 しかしながら、僕から見ると、友人であることを辞めない程度には腹のうちでの探り合いが続けられている。 兄の知り合いは皆そうだ。 心底笑っていようと、目だけはぎらぎらと光っている。 心のどこかでは探り合いが続いている。 僕にはそれが理解できなかった。 やはり、性質的に合わないのだろう。 僕は国を負って立つ器ではない。
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