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これである。
何を思ったか、この人のよさそうな彼、同性の兄にぞっこんなのだ。
事あるごとに嫁に来いと騒ぎ、暇さえあれば花だの交易で手に入れた異国の菓子などを貢ぎ、口説きにやってくる。
少なからず関わりのある縁戚殿が頭を抱え、当の兄はというと長年の積み重ねか、諦め半分疲れた切った顔をみせた。
「今回は、あし、ちゃんとお呼ばれしとンよ? ベルト、やっぱなんだかんだで、あしに会いたくて」
「政治的意図だ馬鹿者が」
「つーん! そんな言い方せんでもよかろーにさ。ちゃあんと祝ってるんよォ? だって、クラちゃんが王になるっちゅうことは、ベルトがフリーになるってことだろ? 今まで、国が捨てられんから嫁げンかったんじゃし、もう晴れてしがらみもないじゃんか! さぁ、心おきなくあしの胸に飛び込んでおい」
「アハハ、面白いこと言うなぁ、フローウ゛ァン皇太子閣下は! さぁ、愉しませてくれたご褒美だ。刺殺、絞殺、撲殺、心おきなく選びたまえ!」
「フォレスト! 君は相変わらず論点がずれすぎだ! 同性婚は、歴史的にも宗教的にも認められないでしょうに!」
流石に二人相手に怒鳴られると、かの変人王子も驚いたのか、大きな瞳をぱちりとしばたかせた。
「いや、あしとベルトならなんとかなろぅに。なんつっても、運命じゃもの。それに、二国関係についても、いいことだと思うんよ。ほら、ベルトんとこは陸戦にゃ強いけど、海にゃ弱かろ? あしンとこぁ、かろうじて地続きだけど、ほとんど海に囲まれとるやんか。おかげで中継貿易出来とるけど、やっぱなぁ」
「ンだよ。完全独立中立国が不満だって? 崇高じゃあねぇか。誰に何があっても、自分しか守らんなんて、誰よりも公平で賢明だ」
「だぁかぁらぁ! あしはベルトの心配をしとるンよ。土地が案外肥沃だし、何より軍事力が絶大だ。ベルンバルト取り込めば、ここら一帯を抑えられる、って歯がみしとるやつだって山とおるんよ。ベルトの性格から、ベルンバルトが戦線拡大させとる思われちょおが、ホントンとこ、相手の侵略に対する防衛戦線が殆どじゃんか。あぶのぉていかんじゃろ」
「でも、俺は負けん。それに、勝つ以上、見返は貰うしな」
「あら? 君が吹っ掛けていたのじゃなかったのか。どちらにしろ、我が国としては、下手ないさかいに巻き込むのはやめていただきたい」
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