2章:国と国とを背負う者

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「しゃーねぇだろぉ? 半同盟国家なんだからよ」 「じゃから、あしとベルトが結婚すれば、最大の独立国ができるんよ! 誰にも狙われんようなるし、誰にも侵略なんかされん! ベルトも血を浴びンでもいいし、もしベルンバルトになんかあったら、あしも大手を振って出ていける!」 「お前、分かって言ってンのか? ベルンバルトと統合するってことは、あのスウ゛ェロニアと対立するということだぞ。俺と違って関係も良好じゃねぇか。それに、あれと――カミュといがみ合うことになる」 もうひとりの名を出し、兄は苦々しげに口を閉じた。 かつて友好を交わした幼子たちは、今や道をちがえてしまった。 兄は独裁をひた走り、その力を疎むスウ゛ェロニアの現女王が取った政策により次代王カミーユ・ビュケは兄と敵対、唯一の中立国であるフォレストの父母たちは無関心を決め込み、海軍部長という要職を得ながら未だ一軍人としてしか認められていないフォレストは完全に手を出せない。 今や、戦機はいつやといい状況であった。 「で、俺に3番目の后になれってのか? あの臆病者のために?」 馬鹿らしい。 呟いた言葉は、紫煙に溶けて消える。 「正室、あけちゃるよ?」 「いらんわァ!!」 怒鳴り過ぎて疲れたのだろう、完全に堕落の体勢に入った兄に、背後の人がくすくす笑う。 兄の調子を乱すのは、やはり彼くらいなものなのだ。 もうこの話題は終わり。 宣言に近く手を振った兄の遠く、締め切られた扉の先から小さな喧騒が響いた。 先は廊下。 訝しく顔をしかめる一同に、それはゆっくり近づいてくる。 砕かれんという破壊音を轟かせ、盛大に扉が引き開けられた。 立っていたのは、雄牛もかくやという巨体。
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