2章:国と国とを背負う者

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「とにかく俺は認めんからな! 戦地で従うに値するのは、後にも先にもベルトだけだ。 それでも王座を蹴るというのなら、俺達北方軍は、今後一切帝都指揮下には入らない。 何があってもだ!」 「随分な忠誠心ですねぇ。話も聞かず、断定ですか」 「お前はひっこんでろ。これは、ベルンバルトの。ブライトクロイツ王家の問題なのだ」 「そこに貴方が何故関わるのです? ハインリヒ・ビットナー将、軍?」 あからさまに名前を強調した彼に、ハインリヒ将軍は怒りで顔を染める。 「俺は、こいつのハトコだ!!」 「ほとんど他人ではありませんか。 それに、親類であったとしても、その言い分は如何なものでしょうか」 背筋を寒気が這う。 命の危険すらをも感じさせる、そんな瞳で。 「ライマー将軍」 「はっ」 いつの間にやら背後に立っていた騎士が、兄の問い掛けに応え、歩み出る。 「シリウスを呼べ。北方軍を喰らう。それから、各地方区に意見を求めておけ。僅かでも、反抗の意志を見せた者は南方の島に送ってやれ。軍閥には、シリウスに部下を派遣させろ。嗚呼、従わなければ、実力行使も構わない。そうだな、いっそ殺してしまった方が楽かもしれんぞ。新たな王を認めん者は全てだ!例外は認めん。王家に連なろうと全て!いい見せ示となろうなぁ。歴将の首でも城門に吊れば、抗おうとする者も失くなろう」 将軍の顔から、するすると色が無くなっていく。 可哀相に。幾多の武勇を共に駆け抜けてきた驕りか、彼は兄を甘くみていたのだ。いや……自分の意見ならば聞き届けてくれると信じていたのか。 それを知りながら兄は、背後に控えた騎士に、小さく耳打ちをした。 「死体は、北方戦線にでも紛れさせておけ。あそこなら、体裁も悪からんだろう」 漏れ聞こえる笑い声。 兄の笑い声は、殆どの人に絶対の恐怖を味わわせる。 以前、彼が笑った時は、南部の村が一つ消えた。
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