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予定にない言葉は、周知の事実をともない、ラグナロクを告げる。
「俺のごとき為らず者に仕えてくれて、本当に感謝している。だからこそ、このよき日に重大な告白をしよう。ここに一つ、知られざる王立法規がある」
掲げられた紙。
時の王によってのみ発刊される狼の印がつけられたそれには、懐かしき父の署名が。
「前国王、第三代アルベルト王による直筆だ。宰相どもも知らぬ。知るのは、限られた数名だけ」
兄は、ニヤリと笑い、
その文面に目を走らせた。
嫌な予感がした。
「《当家の正当なる王よ。
主はまだ幼き、
世は汝の物為。
幼き者よ。
汝無き今、
不在たる玉石の王座は、永久なる不在に等しき。
幼き者よ、
我を許せ。
汝無き今、
我は邪道なる子にこの椅子を渡す》」
古文体で綴られた文面には、何やら捨てきれぬ呪いがあるようで。
ここまでは序章だ。
むしろ、懺悔の走り書きに近い。
兄は続けた。
王の捺印を持つ、最上級の確約を。
「《我無き今、次なる王位は第一帝、アーデルベルトの物なりされどこれは正当な継承権を持たぬ者。
この事実は秘匿し、正当な継承者【真なる第一帝クラウス】の継承までの、暫定措置とす》」
どよめきが上がった。
皆一様に、理解に苦しんでいるらしい。
僕にも解らない。
何が?
何がどうなっている?
僕が、
正当な継承者?
一同の困惑を余所に、兄はくっくと喉を震わせた。
「諸君! 今日は真に素晴らしい! 一重と五つを数えた我らが真の統率者に、返すべきものを返そう!」
「王位継承だ」低い声は、兄の口から発せられたとは信じがたい、安息と絶望を孕んだものだった。
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