アザミ嬢の事

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お昼は相変わらず忙しかった。バイトさんも、厨房のチーフも早く人見つけてほしいよ、と愚痴っていた そして今日、またあの男の人が来ていた。パスタの大盛りをずるずると口に運んでいた 私はニッコリ笑って彼を見た それに気付き彼も私に手を振った 今日はオシャレなグレーのスーツでまるでイタリア男のように派手なネクタイをしていた 私はコーヒーをテーブルに置いた 『また会えたね』 『私は滅多に外にはでないんですよ。忙しい時だけ』 『じゃあラッキーだな俺は』 『ですね』と私は笑った 『ラッキーついでにお願いしてみよう。駄目元で…』 『なんですか?』 『仕事終わったらご飯いかない?』彼は恥ずかしそうに言った 『いいですよ。今日は大丈夫です。早く終われると思うから駅前の公園で待っててください』 『よかった…勇気いったよ…じゃあ約束だよ』 『はい』 私はなぜかこの人の頼みを断れなかった。なぜなら私も同じ事を思ってしまったからだ
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