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「そもそも変だからね。暗号解読が得意な筈の雪菜くんが、僕に依頼にくる時点で暗号の存在を知っていたなら犯人が分かる筈なんだよ。だから雪菜くんは知らない事にしておくか、実際に隠す必要があった」
田中は紙切れを手に持ったまま自身のデスクに戻り、再び腰をかける。
「逆を言えば当然、美咲くんは知らなければおかしい。つまり美咲くんは共犯なんだよ」
田中の言葉に美咲は心外だと言わんばかりの表情で口を開いた。
「ちょっ……。何で私が自分で書いた小説を盗ませなきゃいけねえんだよ。意味が分かんねえ」
美咲は言い終わると少し乱暴にお茶の入ったグラスを手に取る。
「しらばっくれても無駄だよ。実際に短時間で小説のある場所を把握して盗むなんて不可能に近いからね。そして犯行とは別の日に挑戦状を置くという無茶が出来るのも、逆を言えば美咲くんの協力を仰ぐ事が出来なきゃまず不可能だ」
田中は鋭い瞳で美咲を見つめた。
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