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「んで……、私が共犯だったとしてわざわざ自分で書いた小説を盗ませる動機は何?」
美咲はお茶を一口飲んでテーブルにグラスを戻す。
「そうだねえ。つまり、この犯行こそが黒幕からの誕生日プレゼントだったんだよ。そうだろ、黒幕の……」
田中は言いながら雪ノ嬢に視線を移した。
その時ちょうど壁に掛けてある時計が零時をしらせる音を奏でる。
「……雪?」
田中の言葉に雪ノ嬢は満足そうに口を開く。
「Happy birthday、ティナ! なんとも良いタイミングで謎が解けたね」
雪ノ嬢は笑顔で頷いた。
「ああ、そうだね。よく考えれば暗号なんか解けなくても分かる事だったよ。美咲くんや雪がことある毎にみんなの前で暗号の話をしていたのも、知っている人間を多くしておく事で暗号の話をする不自然さを隠すため。そして暗号の存在をみんなが知っているという状態を作るためだったんだ。雪菜くんの前でもあえて話そうとしてたのは、僕の負けず嫌いな性格を知ってたからだね。絶対自分で解こうとするから自分たちが話そうとしても僕が止めるだろうって。そうする事で雪菜くんに隠しているのは自分たちじゃなくて僕っていうイメージを持たせる事が出来る」
田中はそこまで言うと「ふう」と細く息を吐き、言葉を続ける。
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