【第一章:田中たかしの事件簿】

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 雪ノ嬢が雪菜に聞くことを勧めているのは、雪菜が暗号解読などの類が得意だからに他ならない。  しかし田中は探偵の意地とプライドにかけて自力で解きたいから雪菜には暗号の存在も秘密にしておいて欲しいと言い張っていたのだ。 「そのつもりだよ。さすがに依頼失敗では不味いからね。後は送信ボタンを押すだけにしてあるよ。でもギリギリまで粘るつもりさ。雪菜くんなら考える時間も大して必要ないだろうし」  田中がそう答えた時、再びドアが開かれる。  噂をすればと言うべきか……、姿を表したのは今話題に出ていた雪菜と美咲であった。  それによってメール編集画面のままになっている田中の携帯から雪菜に送信される事はなくなっただろう。 「ティナさん、分かった?」  雪菜は雪ノ嬢が座っている反対のソファに腰を下ろす。美咲はその隣に座った。  雪菜の幼なじみにして親友である久江は今日は一緒ではないらしい。  「全然駄目」と答える田中に対し、雪菜の横にいる美咲が「聞き込みの方は?」と声をかける。
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