【第一章:田中たかしの事件簿】

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「そっちも成果なしだったよ」  田中は苦笑しながら小型の冷蔵庫の方に歩いていく。  その時雪菜が不思議そうに田中を見て何かを言いかけたが、口を開く前に再び来訪者が現れた。  宝物のメインキャラクターである秀人と大樹、鏡司の三人だ。この三人には暗号の内容こそ知られていないが、存在自体は知られている。あまり記憶にないが、確か美咲か雪ノ嬢が三人の前でポロッと口にしたのが原因だった筈だ。  ちなみに田中が聞き込みをしたのは美咲と同マンションの住人数名。いずれもこれといった証言を聞くことは出来ず、目撃情報もない。  まず美咲の隣室は秀人が住んでいる訳だが、その時間帯は大樹や鏡司と飲み会をしていたらしい。そこにバイトを終えた美咲も参戦予定だったのだが、その際に小説の仕上がりを確認してもらうつもりだったのに部屋に忘れてしまい取りに行った。すると部屋を出る前にはあった小説がものの数分で無くなっていたと言うのだ。  ただ残念な事にその時鍵を掛け忘れていたらしく、短時間という事を差し引けばある意味誰にでも犯行は可能だった。
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