【第一章:田中たかしの事件簿】

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 そして逆隣の部屋は雪ノ嬢が住んでいる。  犯行時刻が深夜という事もあり雪ノ嬢は自室で現在連載中の宝物~追憶の情景~を書いていたらしい。部屋の中に居たので当然犯人の姿は見ていないし、怪しい物音も聞いていないとか。  その他の住人に関してもほぼ同じ。深夜の数分の事では目撃情報も集まる筈がない。 「んで、犯人は分かったの?」  鏡司は着いて早々に灰皿のあるテーブルに行き、煙草に火をつけてソファに腰掛ける。 「いや、まだだよ。てゆーかお前は……仮にも元警察の前で高校生が堂々と煙草を吸わないで欲しいね」  田中は冷蔵庫からお茶らしき物を取り出しながら鏡司を見て苦笑している。  鏡司たちも、美咲と同じくある事件に巻き込まれた際に田中と知り合った。 「何で俺にだけ言うんだよ。こいつらや美咲も一緒だろ。それより犯人分かってねえのにこんなとこで呑気にしてて良いの?」  鏡司は煙草の話題をサラッと流して話を戻す。  それに対して田中が返事をする前に美咲が口を開いた。
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