危機が招いた進化

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ミトコンドリアを得ることにより、それまで毒物でしかなかった酸素を利用して大きなエネルギーを獲得する方法を得ることができました。それ以外にも複数の生命がお互いに取り込み、あるいは取り込まれていきながら激変する環境の中を生き延びていきました。 酸素に対抗する能力を持てなかった生命は死滅するか、あるいは酸素のない環境で生き延びるかどちらかしかありませんでした。今僕たちの細胞の中にあるミトコンドリアは核の中の遺伝子とは別の遺伝子を持っています。その起源ははるか昔、宿主の細胞に取り込まれた別の生命だといわれています。  また、ミトコンドリア以外にも、べん毛や葉緑素など、この時期に異なる生命が合体することによりできた名残が現在の生命に残っています。  光合成細菌が出した酸素による環境汚染は、生物に新たな進化を遂げさせます。現在の生物の体の中にミトコンドリアがあることは、この世界に残っている生物は全て、かつて幾度もの激変をくぐり抜けた生命の子孫である、そのことの証拠でもあるのです。  別の生命を取り込み、その生命が持っていた特異な機能を自分のものにすることによって、弱点を克服すると共に新しい能力を持つことが可能になりました。  こうして約20億年前に本格的な真核生物が誕生します。大きな体に大きなエネルギー、そして様々な機能と膨大な遺伝子を持てるようになった彼らは、その後、進化の表舞台に躍り出ることになります。  細菌類は現在でも衰えることなく繁栄を続けてはいますが、最小限の遺伝子で生きることを選択したため、大きな形の変化はしませんでした。
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