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まだ小さい頃、あたしは近所の秘密基地で遊ぶのが大好きだった。
秘密基地は、空き地に積み上げられた大きな石の空間。
まだ自分の部屋ももらえない、だからその空間をあたしだけのものにしたかった。
隅の方には花を飾り、飲み物を持ち込み、石の上で字を書いた。
誰にも内緒の場所だから、誰か来たらすぐに分かるように入り口近くには枯れ草を敷いた。
ペットボトルの風車がカラカラとなるのを聞きながら目をつむって思っていた。
あたしは、守られているんだ。
きっと幸せになるんだ。
みんな、あたしの味方をしてくれる。
だってこんなステキな場所も見つけられたから…
あの頃は幸せすぎた。
人間の一生は、幸せと不幸せが同じ割合で出来ているらしい。
そして、あたしは小さく、記憶もおぼろげなその時に幸せをすべて使い切ってしまったらしい。
だから、あなたに初めて会った時もいつもの感覚でしか覚えていないんだ。
差し出された名刺も訪問販売の人の名刺ぐらいの重さでしかなかった。
その時のあたしはただ毎日を繰り返しているだけだったから。
それが、あなたと出会ってあたしはあたしを変える事が出来た。
自分を少しずつ好きになる事が出来た。
それは、とても幸せな瞬間であたしはすべてのモノに感謝した。
そして、あたしがあたしであった事に初めて『良かった』と心の底から思えたんだ。
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