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『うん…』
頷きながら周りを見渡す。
小さなテレビの横に母の好きなガーベラ。
多分父が買ってきたものだろう。
タオル数枚と、写真盾には家族の写真。
急に母親が弱くなった気がした。
窓からはいい風が入り、カーテンが揺れる。
廊下からは食器を入れたワゴンを動かす音がした。
『昨日は眠れた?』
『やっぱり慣れない場所だとね、なかなか寝れないよ』
『そうだよね』
『亜由美…今日はちゃんとお化粧してこなかったの?』
『ん?』
『最近、綺麗になったなぁと思ってたのに』
『…知ってたんだ』
『分かるわよ。娘の事だもの』
やっと母が少し笑った。
ご飯の支度があるから帰ると伝え、病室を出た。
重苦しい気分で。
母親はいつまでも強くて家族の中心だった。
それなのに…
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