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あたしは、会社では何事もなかった様に過ごした。
誰にも母の事は言わなかった。
検査の結果腸に腫瘍が見つかり、手術の日が決まった時も課長には私用で有休届けを出した。
手術が3日後に迫った日、いつも通り病院へ寄って帰ろうと駐車場へ向かうと、お局が居た。
もう、結構前に帰って行ったのに…と思いつつ声をかける。
『お疲れ様です』
近付いてくるお局。
『亜由美ちゃん、…何か悩み事あるんじゃないの』
『えっ?』
『最近、元気ないよ。みんなもそう言ってる。何かあった?』
『いえ、…大丈夫です、すみません』
『そう…、でも何かあったら言うのよ。だてに年とってるわけじゃないんだから。いつでも亜由美ちゃんの味方よ』
『ありがとうございます』
じゃあね、とお局はさっそうと車に乗った。
あたしは涙が出そうだった。
気にしてくれる人が居る。
それだけで今は心強かった。
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