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あたしは、由美ちゃんから直球を投げられた。
母の病気が分かった時、あんなにも足立さんの事は諦めようと思ったのに。
由美ちゃんに、ちゃんと否定できなかった自分の優柔不断さが惨めだ。
これから由美ちゃんとは、どんな顔して会えばいいんだろう。
足立さんの事は、ちゃんと否定すべきだ。
それとも、あたしは何か期待しているのか…。
いつものように、病院へと向かう道すがらも由美ちゃんの事を考えていた。
母の顔を見たら、素直に話したい自分がいた。
足立さんの事、由美ちゃんの事、少しずつ話した。
母に話す事で、今まで隠してきた感情が洗われるようになった。
初めて自分の正直な気持ちを口に出した瞬間だった。
『亜由美は、足立さんの事が好きなんでしょ?』
『…うん』
『じゃあ、何でその由美ちゃんにちゃんと言わなかったの?』
『あたしは、由美ちゃんみたいに素直じゃないし、可愛くないし…ただ、足立さんの事は憧れみたいな感じだったから』
『本当に亜由美は昔からそう。いつも逃げてばっかり。
それに、なんでお母さんの病気と足立さんを好きになる事を同じ天秤にかけるの?
それは、おかしいよ亜由美。
自分に自信がないから理由をこじつけて気持ちを押し殺してるだけよ』
『別にそんなんじゃないよ。
あたしは、お母さんの方が大事だったから色恋沙汰で浮かれてる場合じゃないと思ってさ』
『ほら、それがおかしいのよ。
そんな事で、お母さんが喜ぶと思う?
別に色恋沙汰で浮かれていても良いじゃない。
娘が幸せな顔をしてくれてたらそれだけで母親は嬉しいもんよ』
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