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『由美ちゃん、ありがとう。
あたし、イマイチ自分の気持ちにも素直になれなくて。
でも、由美ちゃんと話してて何かスッキリした。
あたしなんて、なんだか恥ずかしいけどもう少し頑張ってみるね』
『佐山さん、自分の魅力に気付いてないんですか?
まぁ、いいや。
ライバルに花持たせる事ないも~ん』
『えぇ?何言ってるの?
あたしなんて、由美ちゃんみたいに可愛くないし、センスもないし、暗いし。
これでライバルなんて由美ちゃんに笑われちゃうなぁって』
由美ちゃんはふぅーっと大きなため息をつく
『これだから佐山さんって。
知らない人が聞いたらイヤミに聞こえますよ。
本当にまったく…』
由美ちゃんはブツブツと何か言ってるが言ってる意味がよく分からない。
いぶかしげなあたしに由美ちゃんは
『ビルが見えますね』
と話を変えた。
まだ窓の辺りにはシートが被せてあるが、外観は殆ど完成しているようだ。
『私達が好きになった人はこんなビルも手掛けちゃう人なんですね~。
何だかスゴいですね』
『うん、本当に』
しばらく無言でビルを眺めた。
今日は由美ちゃんと話が出来て良かった。
由美ちゃんの行動力は強敵だけど、もう少し好きでいてもいいよね。
以前、みんなで意見を出した看板が見えた。
出入り口でどんと構え、お客様を待っている。
看板の周りは花の模様で縁取りされていた。
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