告白

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パーティー会場は、まだ新しいニオイがする一室で行われた。 ここは、結婚式場にも使われるらしい。 高い天井とシャンデリア。 集まった関係者はのべ150名程… それだけで酔いそうだ。 挨拶が終わり歓談の時間になった。 立食パーティーなので、途端に料理に列が出来る。 一番身近なテーブルから料理を取り、お局に合図を送って窓際の隅に移動した。 壁にもたれかけながら会場内の様子を観察する。 ビール片手に注ぎにまわる人。 料理を前にじっくりと選んでる人。 あちこちで、だんだんとグループの輪が出来始めている。 由美ちゃんが、同じ課内の人と料理を選んでる姿も見えた。 お局は知り合いに会ったらしく、立ち止まって話をしている。 こうやって少し遠くから見ていると、自分だけ異空間に居るようだった。 『お一人ですか?』 不意に声をかけられ我にかえる。 隣に少し年上位の年の男性が立っていた。 少し身構えてしまう。 『いえ、会社の人と一緒です』 『そうですか。僕も同僚と一緒なんですが、ほら、あそこで盛り上がってて…』 彼が指差した方向を見ると、大きく手振りをしながら話込んでいる男性が見えた。確かに顔がいい色になっている。 『僕は人混みが苦手で、どうしても隅に来てしまうんです』 ふふふとあたしは笑う。 彼は、物腰が柔らかな話し方をする人だった。 騒がしい雰囲気の中、ちょうど聞き取れる声で話す。 初対面のあたしとの距離の取り方もいやらしくなかった。 きっと、周りに気遣い出来る人なんだな。 彼と会場内の様子を見ている。 どんどん、この空間だけ取り残されていく様だった。 『外の空気に当たりに行きます。一緒にどうですか?すごくいい場所があるんです』 えっ、と一瞬返事に困ってしまう。 この人は大丈夫だろうか? それに、もしかしたら足立さんが… 『そんなに警戒しないで下さい。僕はこういう者です』 彼は名刺を取り出した。 加藤設計事務所 代表取締役 加藤 篤史 さりげなく左手を見ると、薬指には指輪をしていた。
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