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「行ってきマス!」
碧が通っているのは電車で20分程のとこにある学校。まだ通い始めて一年にも満たない。
今日で最後と言うのは、今日が終業式であるのと碧が近々引っ越しをするという二つ理由があるからだ。
「…あっ、定期!」
そう言って家に戻っていく碧。その光景は、いつもと寸分変わらぬものだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「おはよー」
「おはよーデス…」
「おはよー。眠そーにしてるね」
「電車の揺れがキモチよくってデスね…。つい、ウトウトと…」
ふへへ…と言いながら碧は手を頭にやり、笑った。
「…あんた、今日で最後だってのに何にも変わらないわね」
「そーゆーもんデスよ」
お前ら席に着けー。普段ジャージ姿の担任は、見慣れないスーツを着込んでいた。
「……今日が最後だね」
「…うん」
「メールしたげるよ……たまに」
「たまにデスか…」
「アオ、向こうに着いたらどんな所か言いなさい」
「最後までアオってゆんデスか。…でも、絶対メールしマスよ!」
「電話よ」
「…っはいデス!」
彼女達はみんな学校に入ってから知り合った中で、一年は親友と呼ぶには余りにも短いけれど、学校生活で一緒に過ごして来たのは紛れも無く彼女ら。
昨日は大丈夫だって思ってたけど、なんか顔みたらいきなり涙が出そうになっちゃったデス…
「…泣きたいなら泣けば」
「これから終了式なのに泣く訳に行かないデス…ずびっ」
「もう泣いてるようなモンだけどね」
「いんデスよぅ!目から涙が出てなければ」
「「出てるし」」
「こころの汗デスぅうぅぅ!!」
泣いてない、泣いてないデス。
ちょっと雰囲気に流されただけでは泣くとはゆわないんデス…。
鼻と眼を擦りながら碧がそう呟けば、周りは苦笑まじりのため息をはいた。
「ほら、早く鼻かんで涙拭いて」
「あぃ…」
「そろそろ移動よ。そんな顔してたら変人と思われるわよ」
「だいじょぶデス…」
先生が体育館に行けと指示する中、私は服の袖で顔を拭きながら、廊下に出た。
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