事のはじまり

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寒い体育館の中での長々しい校長の演説が終わり、恒例の大掃除もワックスがけも終わった。 「あとは帰るだけだね~」 「そデスね」  帰ったら引っ越しの続きをしなきゃな…。 今まで机の肥やしになっていたノートや教科書をかばんの中に詰め込み、軽くため息をついた。  外では雪がちらついている。曇っている空を見つめ、碧はコートに腕を通した。 「じゃあね…碧(ミドリ)」 「!! …うんっ、バイバイ!」  また、目頭が熱くなってきた。  この名前の漢字のせいで、ミドリよりもアオイと呼ばれる事が多かった。正直、ミドリと呼ばれたのは学校に入ってほんの数週間の間だけで、あとはずっとアオイ、もしくはアオだった。のに、今日に限って碧(ミドリ)、って……。 今、すごく目頭が痛い。出ようとする物を無理矢理堪えてるから。 目頭に力を入れながら笑う様は、どんな不細工に見えてるだろう。 他の事に気を散らし、深く考えないようにしながら碧は手を振り返し、教室を後にした。 →
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