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電車が次の駅へと走り去った後、駅のホームには一つ影があった。先程の銀髪の男だ。日が傾き、風が強くなっていくなか、彼は今も彼女走っていった階段の方を眺めていた。
もちろんその先に碧はいない。
≪チリン…≫
足元で音がした。
見ると、鈴の付いた青いストラップだった。古い物なのだろう。
鈴は色がはげ、根付けは少し黒く汚れ、切れてしまっている。
彼はそれを拾うと僅かに微笑み、ポケットにしまい込んだ。
「もうすぐ…もうすぐだ…」
彼は俯き、自分に言い聞かせるように呟いたそれは何もない、ただ寒いだけの空に吸い込まれていった。
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