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僕は年期の入ったドアノブを回して外へ出る。
小さな階段を下ると、
そこは鼻が感じた雨の匂いに満ちていた。
この店がいつもで良かった。
熱すぎないのも、冷ませるのも、和紙のような手触りのこの紙コップだからだ。
横顔は、店の前で座り込んでいた。
傘をさして、
僕はコーヒーを持ち直す。
しっとりとしみこんでゆく
指先。
僕と重なるから、だろうか。
それともただ単に、
惹かれた、からだろうか。
ネオン街はキラキラと
雨に霞んでゆく。
傘とコーヒーをさしだした手は、一方通行でも良いから。
また、小さく始まってゆく。
「いつも」ではない、
優しい時間。
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