1、日常

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1、日常

カチカチ… カリカリ… 無機質な筆記音だけが教室に溢れている。 現在、13時46分。数学の授業中。 空は青く、手元のノートは手の擦れで灰色になりかけながらも私が書き出す数列を受け止める。 …私はただ、見えた数列を並べる。 勿論見えなくても解けるけど、見たまま書いた方が楽だと今までの三年間を経て確信した。 三年…か。 長いと思えば長いが、振り返ればあっと言う間。 長い長い人生の一瞬。 でも、私にとっては重要な三年だった。 それを経た今は、こうして再び平穏を手に入れたのだから…もう気にしない。 …現実は、昔と変わらないけれど。 そんな事を考えていたら、バサッという音と共に頭に衝撃がきた。 「おい早川…手ぇ止まってるぞ?」 上から降る声に顔を上げると、黒縁眼鏡をズリ下げニヤニヤ笑う数学教師が居た。 「…終わったので。」 事実を呟いて視線を合わせる事なく再度ノートに頭を下げると、上からフンッという鼻につく笑いだけが聞こえ、教師は離れていった。 そして、周りから二、三人-多分、いや間違いなく同じ中学だった人々が-クスクスと笑い声を発した。 …知っている記憶。知っている世界。 つまらない つまらない 世界はいつからこんなにも色褪せて見えるようになったのだろうか。 それは多分、三年前―…
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