第1章

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「おいちゃん、おきた」 まだ幼稚園位のその少女は、嬉しそうにそう俺に言った。 どうやら、病院前のバス停のベンチで寝てしまっていたらしい。 昨日、そんなに飲んだだろうか… ―そうだ、今何時だ? 頭にズキリと緊張が走る。気づきたくない物に気づいてしまった様な、そんな感覚だ。 ―え? 腕時計にはヒビが入っていた。 しかし、腕時計は朝の10時27分を正確に指している。 ―会社!会社へ行かなくては! 俺は落ちていた鞄をわしづかみ、丁度来たバスに乗る。 どうやら、そのバスは俺の知ってる路線の駅まで行くらしい。 俺の気持ちは頭が冴えていくのと反比例してどんどん焦っていく。 前の席へもたれて、前の座席の背を指でトントンとやる。 降りる時、背広から携帯が落ちて開いた。もう随分古い物だ。
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