夢でも、夢なら

悲劇

８月２１日

「やっと着くんだなぁ。ありがとうね慶ちゃん」

とある車に乗った男女が話しあっている。
女に急に話しかけられて驚いた男が
「起きたのか。まぁもう直ぐ着くから丁度良いかな。あぁ解ってるよ。幼なじみ同士の結婚だからな楽しみだよ」
と会話の途中に茶々を入れられながら男が答える。
それを聞いた女が胸を張って
「まぁ楽しみにしててよね。最高の結婚式にするんだから」
と女が言うと男は名残惜しそうな顔で
「やっぱりお前綺麗だな。あっいや、まあほら、あいつと幸せになれよな」
と男がつい出てしまった本音を隠す様に建て前を並べると女は男の方を向き照れながら嬉しそうに
「もう、人妻に何言ってんのよ。まぁありがとうね」
と言うと男も女の方を向き
「どういたしましてです」
と言った男の笑顔はどう見ても自然なものでは無かったが幸せの絶頂に居る女は気づかない様だった。

女が男の不自然の表情に気付かないのと同じ様に横を向いてしまった男は目の前に悲劇が迫って来ている事に気づく事が出来なかった。