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勇二は首からネックレスを外して手に取り。
「強いて挙げれば、このネックレスの持ち主は街を守る気持ちが他の誰より強かったって事かな」
と話す勇二は樋口との仕事を思い出していた。
金持ちのクライアントには料金吹っかけるくせに、あまり金が無い依頼者には時には缶珈琲一本で依頼受けたりという感じではあったが、依頼者の為ならどんな困難があろうとも依頼を完遂していた。
故に荒事も多かったが、その荒事もさっきロクサーヌが言っていた、音の資質。
単なる異常な地獄耳みたいな物と思っていたが、その資質で難局を乗り切ったのも数知れずだった。
言ってみれば、樋口の想いと自分の資質が合わさって、今こうしてここに居るのだろうと思えた。
「しかし・・・転移の魔具と造魔精製をやってるギルダートを討たねば、また彼等の世界へ行くだろうし、それを止める術が我等にはありません」
とムーアックが口を開いた。
「そうね・・・私達が人間界で実体化は出来ないし、それに対してギルダートはいつでも造魔を送り込める」
とロクサーヌが答えた時
「大丈夫!! 葛城さんがさっきみたいに変身して悪い奴はやっつけてくれるよ」
と美紗が宣言した。
「ちょ・・・俺は何も・・・」
と勇二は口ごもるが、美紗は構わずに
「碧の依頼の依頼人の頼みだよ? 断れる? ミイちゃん達にご馳走になったんだし」
「そ・そんなつもりじゃ無くて」
とミイフーヌは慌てて答えた。
今の所、聞いた限りだと勇二達の街に二年前と状況は違うが脅威は確実に迫っているのは事実だった。
「お前が街を守るんだ」
と樋口が生きていたら絶対に言うだろうと思えた。
勇二は深呼吸し
「あくまで対処療法みたいになるけど、その造魔が現れたら俺が何とかするから、そのギルダートって奴を片付けてくれ・・・下さい」
とミイフーヌに告げた。
「ありがとう・・・なるべく私達の世界でギルダートは抑えます。
でも万が一の時はお願いします」
とミイフーヌは勇二に頭を下げた。
「いえいえ、とんでもない、街を守るのはこれを継いだ俺の仕事ですから」
とネックレスを掲げた。
ロクサーヌは勇二に
「人間界に戻ったら、一つ頼まれてくれないかしら?」
と勇二に頼み事を話し始めた。
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