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「はい」
と勇二は頭と声を仕事モードに切り替えた。
「夜遅くにすいません」
「いえいえ、どうかしましたか?」
「あ・あの~」
と碧は口ごもった感じだった。
勇二は怪訝に思いながら碧の話を待った。
「葛城さん・・・明日、私が事務所にお伺いした後に時間空いてますか?」
「ええ・・・今の所は大丈夫ですよ。
どうかされましたか?」
「あの・・・良かったら、私と美紗とでお食事行きませんか?」
と語る碧の言葉に勇二は驚愕した。
「しょ・・・食事ですか?
俺は依頼料頂ければそれでいいですし・・・」
数秒間の沈黙。
「すいません、やっぱり迷惑ですよね?」
「いえいえいえ・・・迷惑とかじゃ無いですよ」
と慌てて碧に答えた。
「美紗から聞きましたけど、大変な事になっちゃったみたいで、せめてものお礼をと思って」
「・・・あの~有り難い事ですが、その俺の知り合いも一緒にってのは駄目ですかね?そいつも若干今回の件に絡んでますし」
と軽く焦りながら勇二は碧に尋ねた。
「ええ、葛城さんの知り合いの方なら喜んで。
では明日よろしくお願いします」
「はい・・・こちらこそお願いします」
と碧に告げ、通話を切った。
しかし・・・また一つ厄介事が増えたなと勇二は軽く溜め息を吐いた。
自分は碧の依頼を完遂しただけで、食事を奢って貰う理由も無かった。
元々、自分は義務感は強い方だったが樋口の元で更にその義務感の強さは増幅し、危険な依頼も顔色一つ変えずに行う事が出来たが、
女性は苦手だった。
依頼遂行中は感情を殺しているので、女性もどうという事は無かったが。
明日はただの食事会である。
碧だけなら、何とかなるかも知れないが美紗が同席となると・・・
自分があたふたとする姿をからかう光景は容易に想像出来た。
咄嗟に森川の名前を上げてはみたが、メイドカフェが飯より好きな輩であるので、勇二は更に気が重くなって来た。
だが、森川を捕まえとか無いと明日、勇二の信条である【全てはクールに片付ける】があっさり崩壊するので、携帯で森川を呼び出した。
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