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二年前に音戦士となりドニントンの百年来の戦いを終わらせ英雄となった城戸一樹は妻である深雪との間に子供が生まれて、今は三人で慎ましく幸福に暮らしていた。
二人の間に生まれた子供は女の子で優音と名付けていた。
日々成長していく優音を見れば俄然仕事にも気合いが入るのを感じていた。
一樹は今は配達先である小熊に向かっていた。
やはり夏はビールの売れ行きが倍増し小熊も例外では無く、小熊のマスターは気を利かせて二日分の注文をくれるのだが、それでも足りずに追加注文に走る事が多々あった。
「マスターが使う塩が最高だからだろうな」
と天然製法でしかも製造量が希少と言う塩を何回か別けて貰い、スーパーで買った魚に軽く振って焼いたところ、その美味さに一樹も深雪も絶句した事を思い出しながらもトラックは小熊へと到着した。
一樹は車を降り荷台からビールケースを抱えて
「こんにちは~西京酒店です」
といつもの様に店の中へ入って行った。
勇二は森川や碧達と合流して、事務所を出て近くの小洒落たレストランへ向かっていた。
碧と美紗の姿をみて、森川はテンション上がったらしくて、饒舌に自己紹介を始め同じくテンション高めな美紗と意気投合したらしく森川ー美紗、勇二ー碧という区分けになって歩いていた。
二次元オタクの森川と美紗は色んな話で盛り上がりを見せていたが、自分と碧は言葉数も少なく、どっちがオタクなのか解らなくなった気がしていた。
このままじゃいかんと勇二は思い
「あの・・・」
「あの・・・」
と二人が口を開いたのは同時だった。
「あ、お先にどうぞ」
「いえいえそちらこそ」
と二人が促す台詞に軽く二人は笑った。
勇二は軽く咳ばらいして
「俺、何かつまんなくてスイマセン。
何かこういうの慣れてなくて」
と頭を掻きながら碧に語った。
「いえいえ、私こそつまんなくてゴメンなさい。
美紗みたいに喋れないし」
と碧は頭を下げた。
「イヤイヤイヤ、俺が引っ張らなきゃいけないんだが、俺は森川みたいに話題無いし。
てか、奴はオタクなくせに・・・俺よか慣れてるし」
と勇二達の前を歩く森川を指差した。
碧はニコリと笑い
「やっと敬語じゃ無くて普通な言葉で喋ってくれましたね」
と勇二を見た。
「え?あぁ・・・何かすいません。
てか、田原さんもタメ語でいいですよ」
と軽く慌てながら勇二は答えた。
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