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勇二は碧達と食事を終えて今は西京霊園に来ていた。
この霊園は西京のメインストリートから外れた小高い山の上にあり、人通りも少ない場所だった。
居並ぶ墓石の中を一人歩くのは昼とはいえ余り良い気分では無かった。
暫く墓地の中を二条から聞いた名前の墓を探し歩いていた。
墓地の裏側は山がそびえ立ち、蝉の鳴き声が響いていた。
更に暫く歩くと目指す名前の墓が見つかった。
最近荒らされたと言う墓は修復されている様な感じで、特に異常は見当たら無かった。
「しかし・・・何故わざわざ墓荒らしをするのだ?」
と人間の犯罪者が金にならない普通の人の墓を荒らす訳では無いので、ギルダートの仕業とほぼ確定しているのだが、わざわざ人骨を使わずとも、像魔精製に骨が必要ならドニントンで集める方が手っ取り早いのでは?と思えてならなかった。
ドニントン城で誰からも造魔精製について説明も無かったので、仔細は不明であった。
「・・・無駄足だったのか?」
と今自分がここにいる意味を考えてみたが、少なくとも碧達との食事会が終わってから二次会のカラオケから逃げる口実が出来たので良しと思えた。
森川は今頃、お得意のアニソン熱唱してるんだろうな? と思うと少し笑えてきた。
碧は何を歌うんだろう?
とちらりと頭に浮かんだ自分に苦笑した。
「良かったら葛城さんも見にきてね」
と自分と森川に渡されたチケットを思い浮かべていた。
碧と美紗の夢のはじまりのコンテスト。
自分はそういう強い夢という物が無かったので、二人の挑戦は素直に応援したいと思えた。
だが、自分が歌うカラオケは別問題だった。
そんな事を考えながら、西京霊園をくまなく見て廻り、特に異常もなさそうだったので、バイクを停めた誰も居ない駐車場へ戻る事にした。
誰かが献花してある花を風が揺らした。
その時、また西京大学の音楽室で聞いた
「ブン・・・」
と空気が震える様な音が聞こえた。
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