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【3時間後】
勇二は西京パブリックホール前で森川と合流し、ホール入口へ連なる階段を歩いていた。
「本当、凄いイベントなんだね~。
一次予選は300組を超えてたらしいよ」
「マジか?そりゃ凄いな・・・碧さんと美紗さん受かるといいな」
「大丈夫だよ。
入賞は10組迄枠があるみたいだし、碧タンの歌声なら余裕だし、美紗タンのキーボードもピアノで鍛えてるから凄いらしいし」
「って二人だけで出るん?
ギターやベースやドラムはどうすんだ?」
「多分、キーボードの打ち込みじゃ無いかと・・・
てか、今日の葛城君熱いじゃん」
と冷やかし気味に森川が答えた。
「やかましいわ、ただ気になっただけだ」
と軽く憮然と答える勇二に向かって
「素直じゃ無いんだから」
と森川は苦笑した。
出場するバンドの応援の人々はホール入口に近付くに連れ増えて行き、階段を登りきるとあちこちで、明らかにコンテストに出場する姿の人と、その応援を行っている姿が目に入った。
勇二はあちこちに出来ている人混みの中に、碧と美紗の姿を探した。
二人の姿を探していると
「葛城さぁ~ん、森ちゃぁ~ん」
と美紗がこちらに向かって手を振っていた。
「美紗タァ~ン」
と森川も手を振り答えた。
勇二も森川も急ぎ足で美紗の元へ向かうと、応援に駆け付けたであろう20人位の若い男女に囲まれてる中に碧と美紗の姿が見えた。
「葛城さん来てくれたんだ」
と応援に駆け付けた人の輪を縫って碧が小走りに近付いて来た。
「うん、仕事も上手い具合に無くて、てかこないだのカラオケで碧さんの歌声聞きそびれたから、どうしても聞きたくて」
と勇二は自然な笑顔で碧に告げた。
「ありがとう。
私、凄い嬉しいよ」
と告げる碧の視線は眩しかった。
「て・てか、頑張ってね」
と多少照れながら答える勇二に碧は手を差し出して
「あ・・握手とか・む・無理だよね?頑張る力を貰え無いかと」
と碧も照れながら勇二に尋ねた。
「い・いやいや・・・お・・・俺でよければ」
と勇二は上着で手をゴシゴシと払って、碧の手を握った。
華奢で柔らかい感触だった。
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