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ステージ上では美紗がキーボードの所迄歩いて行き、暫くして会場内に碧のサンプリングした声が響いた。
「いよいよだね」
「ああ・・・」
と勇二は答え流れる音に耳を澄ました。
サンプリングの歌声と共にキーボードの装飾音が絡みイントロが始まった。
美紗が奏でる電子ピアノのメロディーはどこか切なく悲しげだが、キーボードにサンプリングされたドラムのリズムには綺麗に乗っていて、勇二は初めて聴く不思議なサウンドに魅了されていた。
「崩れそうな心は何処に行くの」
と碧が透明で伸びやかな声で歌い始めた。
勇二はこういう風な音楽は詳しく無いのだが、優しく染みるが声量のある碧の歌声に一発で引き込まれて行った。
碧と美紗がステージに上がった時に声を上げ声援を送っていた森川も、今はただ静かに聴き入っていた。
「見据える未来は違うけど
夜空に浮かぶ三日月は
同じ想い抱いた背中を
優しく照らすよ」
碧は切々と歌い上げて、美紗が紡ぐピアノの音はより切なさを増して、サンプリングのアコースティックギターの音で、碧達の演奏は終わった。
会場はさざめく拍手から、やがて大きな拍手の音に変わった。
「何て言うか・・・凄い胸に来た」
と勇二は若干、放心状態で拍手を送っていた。
「そうだね、碧タンも美紗タンも凄いとしか言いようが無いね・・・言葉が見つからないや」
「ああ、でも二人はこのコンテストには合格だな」
と勇二は確信めいて森川に告げた。
「それではswe-twoのお二人様、お疲れ様でした~次は・・・」
と司会が告げ、碧と美紗は一礼してステージ奥に消え、ステージには幕が降り、次の出演者を迎える準備を始めた。
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