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「葛城君、二人の合格はほぼ確定だけど最後迄見て行くでしょ?」
「あぁ、確定だろうけど、一応最後迄居ないと心配だしな」
と言って勇二は笑った。
勇二は何気無く、尻ポケットに入れた携帯を取り出した。
「着信あり」
と携帯をサイレントマナーモードにしていたので、3分前の着信は誰からだろう?と確認すると、二条からだった。
勇二はちょっと焦りながら森川に
「悪い・・・どうしても外せない仕事みたいだ。
碧さんと美紗さんに、後で会う事あったら、二人の演奏は凄い感動したと伝えてくれないか?」
と真剣な表情で頼む勇二に、森川は茶化す事無く
「わかったよ、伝えとくね」
「頼む」
と勇二は急ぎ足で人混みを抜け会場外へ急いだ。
会場を出て、すぐ勇二は二条に電話をかけた。
「二条さん、動きが?」
と誰もいない通路を走りながら勇二が尋ねると
「造魔が出た。
しかも13体も、今から霊園に来れるか?」
「すいません、すぐに向かいます」
と通話を切って、ガラス張りの通路をバイクを停めて来た駐車場へ向けて、勇二は猛然と走っていた。
西京霊園は非常事態であった。
突如前触れも無く、何も無い空間から13体の造魔が現れたのを定点カメラでの映像で確認した二条達は、墓地の方へと急いだ。
「動くな」
と二条は45口径の銃を構え一応の制止の声をかけた。
「人間風情が偉そうに」
と語る造魔は、西京大学で見た裸に近かった造魔と違い、古典的な西洋の鎧を付けていた。
二年前に二条が遭遇した、神村が変化した滅音戦士と呼ばれた状態よりは、シンプルな形状で、巨大な一本角が付いた兜の下に覗く顔は人間では無く異業の怪物だった。
他の造魔もやはり簡素ではあるが鎧を付けていて、それぞれに武器や盾を持っていた。
「我が父、ギルダートの崇高な作戦を邪魔するならば死ね」
と一本角の造魔が叫ぶと同時に一斉に造魔の群れが二条達に向かって来た。
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