#05 胎動

8/16
前へ
/123ページ
次へ
喫茶店で紅茶とスイーツを楽しんだ二人は、今は喫茶店を出て待ち合わせ場所であった西京海浜公園へ向かい、肩を並べて海沿いの道を歩いていた。 喫茶店での会話も、思った以上にスムーズに話せていたのは勇二には驚きであった。 お互いの小さい頃の話や、碧の夢、勇二の仕事内容等を話す内に、あっという間に二時間位過ぎているという感じだった。 「葛城さん」 と碧が勇二の方を見た。 「うん?」 「・・・私も美紗も葛城さんのおかげで、夢の第一歩を踏みだせたけど・・・これで葛城さんとはお別れなのかな?」 「・・・俺は、すっかり二人のファンになっちゃったけど、碧さんや美紗さんが迷惑じゃなけゃ、またこうしてお茶とかしたいな? とは思ってるよ」 と勇二は若干照れ気味に碧に答えた。 「本当に?私凄い嬉しいよ。 何か依頼終わったら、葛城さんから連絡来ないのかな? って思ってたから」 「基本はそうなんだけど・・・ってか碧さんは可愛いんだしさぁ、俺みたいな退屈な男で時間浪費しなくても、もっと素敵な男と楽しい時間過ごした方が良くない?」 「そっくりそのままお返しします」 と言って碧は笑った。 そうこうする内に、二人はバイクと車を停めた駐車場へと着いていた。 「今日は楽しかったよ。 葛城さんの事、少し知れたし」 「俺もだよ。 碧さんが意外とドジって事も解ったし」 と勇二は笑った。 「言ったなぁ~」 と碧も笑った。 「でも、碧さんの小さい時からの夢が叶って本当に良かった。 おめでとうね」 「ありがとう。 葛城さんのおかげだよ。 ・・・また会ってね、約束だよ」 と碧は勇二に小指を差し出した。 「うん。 ゆびきりげんまん・・・嘘ついたらテキーラ飲ます、ゆびきった」 と勇二は歌い笑った。 「ふふ・・・お酒苦手だから、破れないよ~この約束は」 「破らないから大丈夫。 じゃ、今日はおやすみなさい」 「うん、おやすみなさい」 と二人は手を振り別れた。 バイクの元へ向かう勇二も、車の元へ向かう碧も、互いの表情は幸福そうだった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加