#05 胎動

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勇二は一樹から連絡を受け、碧と美紗に暫く西京大学の音楽室へ近付か無い様に釘を刺し、今は令隠湖公園の麓にある古びた教会へとバイクに乗り向かっていた。 教会で一樹と落ち合う事にしていたが、一樹は一度西京酒店へ戻ってから、教会に来る事になっていたので、蛇行する山道を飛ばしながら急いでいた。 突然、サイドミラーに猛烈な勢いで走り寄ってくる馬の様な物に乗った人影が映った。 「何だ・・・馬? いや、造魔か?」 と一瞬で造魔と認識出来たが、馬に乗った造魔は信じられ無い事に、現在曲がりくねった道を平均時速100キロ近くで飛ばしている自分を、馬上の造魔は特に気に留める事無く、あっさりと追い抜いていった。 「くそッ・・・速い」 と直線に入りスロットルを開けさらに加速するが、造魔との差は開くばかりであった。 一旦速度を落とし、造魔を狙い撃つべく勇二はネックレスを取り出し、音戦士と変化した。 そして再度、造魔を追跡した。 直線の上り道を抜けると、今度は曲がりくねった勾配に差し掛かり、物凄いスピードで駆け降りて行く造魔の姿が見えた。 勇二はバイクを急停止させ、バイクから降りて意識を集中して右手を宙に掲げた。 その手にハニカム状の青い光が集まり、その光は長大なライフル銃へと変わった。 ライフルから伸びるプラグをベルトのバックルの様な部位に差し込んだ。 すると仮面の目にあたるT字型の部位の額にあったレンズ型の宝石が埋め込まれた部分がスライドし、勇二の視界に照準マーカーが現れた。 照準マーカーは忙しなく動き、高速で移動する造魔を追っていた。 そして忙しなく動いていた照準マーカーが造魔を補足した。 「捉えた・・・ロックオン」 と勇二は短く呟き、引き金を引いた。 緑色の光が凄まじい速さで空を裂き、造魔が乗っていた馬の様な物を一瞬で破壊した。 「何だ?」 と思いも寄らない方向から強烈な勢いで、自分が乗る馬を破壊された造魔は後方を振り返った。 すると、また緑色の光が自分に凄まじい勢いで向かってきた。 「ちっ」 と造魔は2秒だけ活動可能な高速移動で撃ち寄せる射撃を避けた。
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