第一楽章 黒猫の物語

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公園。駅。図書館。喫茶店。 御主人が行きそうな場所はすべて捜した。 なのに見つからない。 どこ?どこに行ったの? 早く帰ってきて。 僕を1人ぼっちにしないで。 御主人は僕の事が嫌いになっちゃったのかな…? だから帰ってこなくなったのかな? ずっと一緒にいようって言ってくれたのに… 会いたい もう一度会いたい 「それが貴方の願い?」 黒い蝶…? 違う。 僕の体と同じ漆黒の衣服をまとった女の人だ。 誰…? 僕の言葉がわかるの? 「わかるわ。私は魔女だもの。貴方が、突然いなくなった飼い主に会いたがっているのも知っているわ。」 魔女…? だから全身真っ黒なんだね。 僕と同じだ。 でもどうして魔女さんがここにいるの? 「貴方が願ったからよ。私に出会ったという事は、どうしても叶えたい願いがあるということ。私は代価と引き換えにどんな事でも叶えてあげられるわ。」 どんな事でも…? 「そう。貴方の飼い主のように死んでしまった人間でも生き返らせる事も出来る。」 御主人のように? それじゃあ御主人は死んでしまったの? 「あら、知らなかったの?彼女は交通事故で亡くなったのよ。」 そうだったんだ…。 じゃあ御主人は僕を見捨てたわけじゃなかったんだね。
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