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あげないよ。
忘れてしまう事が出来るのなら、もう一度会いたいなんて思わない。
これだけは誰にも渡せないよ。
「…そう。でも、それでは彼女は生き返らないわよ?いいの?」
…いいよ。
会いたいけれど、忘れてしまうくらいならこの悲しみを持ったまま生きていたい。
「わかったわ。…それなら、貴方私と一緒に来ない?」
…どういう事…?
「元々魔女は猫か梟(フクロウ)を飼うのだけれど、私の飼っていた猫が死んでしまったの。貴方が生きたいと言うのなら、一緒に暮らすのも悪くないと思うわ。どうする?それは貴方の自由よ。」
いいよ、連れていって。
僕は大切な存在を失ってしまった時の寂しさを知っているから。
僕が側にいてあげる。
「…ありがとう。魔女の国はなかなか良い所よ。きっと貴方も気に入るわ。そうだわ、一緒に暮らすのなら自己紹介が必要ね。私はソフィアよ。皆、ソフィーって呼んでるわ。」
ソフィー…。
僕の名前はアダム。
よろしくね。
「こちらこそ。」と言って僕の頭に触れたソフィーの手は、御主人の手と同じくらい暖かった。
~End~
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