第一楽章 黒猫の物語

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あげないよ。 忘れてしまう事が出来るのなら、もう一度会いたいなんて思わない。 これだけは誰にも渡せないよ。 「…そう。でも、それでは彼女は生き返らないわよ?いいの?」 …いいよ。 会いたいけれど、忘れてしまうくらいならこの悲しみを持ったまま生きていたい。 「わかったわ。…それなら、貴方私と一緒に来ない?」 …どういう事…? 「元々魔女は猫か梟(フクロウ)を飼うのだけれど、私の飼っていた猫が死んでしまったの。貴方が生きたいと言うのなら、一緒に暮らすのも悪くないと思うわ。どうする?それは貴方の自由よ。」 いいよ、連れていって。 僕は大切な存在を失ってしまった時の寂しさを知っているから。 僕が側にいてあげる。 「…ありがとう。魔女の国はなかなか良い所よ。きっと貴方も気に入るわ。そうだわ、一緒に暮らすのなら自己紹介が必要ね。私はソフィアよ。皆、ソフィーって呼んでるわ。」 ソフィー…。 僕の名前はアダム。 よろしくね。 「こちらこそ。」と言って僕の頭に触れたソフィーの手は、御主人の手と同じくらい暖かった。      ~End~
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