「日常」という名の「非日常」

9/11
前へ
/30ページ
次へ
ともかく、本物は早急に処理してしまわないとならない。 それにしても、逢坂君の爆弾処理能力がまた上がっていた。 上限がないのか? いやー、いつもいつも、爆弾の制作中に逢坂君は急に現れるんだ。 今日みたいに誰も居ない時間になってから作業をしていたのに。 今回みたいに、ちょっと一週間用事を頼んでおけば、今までの失敗は無かったのだろう。 海外に行って貰っていたんだから、邪魔できなくて当たり前か。 56回もの実験がもったいない。 いや、それでも仕事を早めに終わらせて、爆弾が完成した後だったとしても、大学に帰ってきた所は流石と言うべきか。 など、どうでもいいことを考えつつ、手は着実に爆弾を処理していく。 「うしっ、後は、これを取り出してしまうだけだ。しっかし、綺麗な色をしているな。これだけで四国が消えるとは、とてもじゃないが信じられない」 爆弾の中に入っていた“モノ”。 それは、美しく水色に輝いていた。 何の原理かはまだ解明されていないが、中で金粉が舞っている。 楕円形の平らなガラスの中に入っており、青空に数多もの星々が浮かんでいるような錯覚を、見る者に与える。 幻想的な世界が一つの小さな粒に詰め込まれていた。  
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加