「日常」という名の「非日常」

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自分は、日本一、いや世界一の不幸者なのではないか。 そう思うときがある。 何故ならば、今の状況を省みるに、自分の部下、しかも女性に説教をされているのだ。 情けないことに、ああなった逢坂くんに対抗する術を、自分は何一つ持っていない。 この状況はどうにかならないものか。 地面に直接正座をしているので、足が痛い。 かれこれ2時間半、この態勢を強いられており、恐らくもう立てないだろう。 「……やから、うちら科学者は、人を傷つける様なことは絶対にしたらあかんねん。あんたは昔はもっと……おい、話聞いてるか?」 いだっ、蹴るな。 はぁ、良いことがあったと思ったら即この仕打ち。 神の存在を一瞬信じた自分が馬鹿だった。 「あぁ、聞いてる」 なのに、逢坂に反抗出来ない自分がいる。 あの事件から2回目だ。 逢坂が地の出るくらいにキレたのは。 「……あんたの研究にうちは惚れた。論文を人目見て、この人が、此れからの日本を支えていく人物なんだと思ったんや。必死に勉強して助教授まで登り詰めたものの、本人はまるでやる気がなく、大学に居座り続けるために、適当な論文を書いてるばかり。正直、ガッカリしたわ」 綺麗な顔を歪ませて、ため息をついている。 年に合わず、それは重々しい。 「そう言われてもな、元の材料が無いんじゃ仕方ないじゃないか」 今度、お詫びに何か奢ろう。 だが、それとこれは別。 つまり、材料が無いというのは嘘。 極少数だが材料はある。 今、爆弾の中に入っているものが正にそうだ。  
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