『過去』――2

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 とにかく、事故を防ぐためには、雅樹を外出させないことが一番だった。 「母さん!どっか行こうよ!」  しかし、雅樹は紗枝の言葉を無視している。 「そうねえ……」  母が迷っている。こういう時は雅樹に押し通されてしまうことが多いのだが、今日はそういうわけにはいかない。  紗枝は反対し続けた。 「わかったわかった」  母が溜息をついた。 「紗枝、今日は我慢して、遊びに行こう?最近、どこにも出かけてなかったしね」  雅樹を喜ばせるその言葉は、紗枝を絶望させた。  いつだって、母の決断は絶対だった。  「死者は蘇らない」……確か、男はそう言った。 「よっしゃ!母さん、どこ行くの?」  雅樹がはしゃいでいる。  その明るい声に、紗枝の絶望の色がさらに濃くなった。  しかし、まだ諦めるわけにはいかなかった。  雅樹が事故に遭わないように、自分が見張っていればいい……。  紗枝は、冷めたコーヒー牛乳を一気飲み干した。  今の紗枝に、母の味は甘すぎた。
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